発達障害の子の指導②
今日は、小5から指導している現在高校1年生のB君のお話です。
B君のお母さんとは元々お知り合いだったという事もあり、
指導の依頼を受けました。
B君は幼児の頃に「高機能自閉症」と診断されたそうで、
お母さんからは「この子は塾とか無理だと思うし、家庭教師も全く知らない人にお願いするのは怖いから」という理由でご相談を受けました。
私がA君(発達障害の子の指導①)を指導したことがあったのも大きかったようです。
まず初めにB君のお母さんからお願いされたことは
①絶対に叱らないでほしい(特に大きな声はNG)
②新しいワーク類は本人が初めに最後までパラパラ目を通したがるから、
それはさせてやってほしい
③慣れるまでは「今日は〇〇と△△をやるよ」と言ってあげてほしい
④終わりが見えないことに不安を感じるから、ある程度の時間が経ったら
「今日はここまでやったら終わりね」と声かけをしてあげてほしい
⑤頭が混乱するとすぐパニックになって自傷癖もあるから、そういうときは
休憩させてほしい
というような事でした。
B君の指導ミッションはこちらが決めて良いとの事だったので、
①毎回漢字の小テスト
②算数のワークを一緒にやる
③中1の英語を2年かけてのんびりやる
④毎日日記を書く
という4つにしぼりました。
特に算数が好きではないため、ちょっとでもわからないことがあると
目に涙をためて呼吸が荒くなり、
最終的には鉛筆で自分の手の甲を刺し始めてしまうという特徴がありました。
そんな時は、
「一度この部屋から出てリフレッシュしておいで」
「何分かかってもOK」
「嫌だったら戻ってこなくてもOK」
という事を伝えて、なるべく彼のペースに合わせました。
わりとすぐに戻ってくる日もあれば、30分戻ってこない日もありました。
B君は自分には自信がないのだけれど、
出来ない自分に腹が立ってしまう事が多かったです。
宿題をやり忘れてしまったら、そんな自分に腹が立ってしまうし、
1度の説明で把握できなくてもイライラしてしまいます。
もちろん、そんな彼のペースに合わせるのですから
正直言ってこちらも腹の立つことはたくさんありました。
しかしそこはグッと我慢。
我慢、我慢、ひたすら我慢です。
2年かけて英語の基礎を叩きこんだので、
中学に入ってからの英語はほとんど苦労せずに乗り越えられました。
本人も「英語は得意」と自分に良いレッテルを貼ることができたので、
英語の勉強は苦ではなかったようです。
暗記も得意なので、文系科目はよくできていました。
高校に入ってからも指導は続けていますが、
さすがに化学や数学はキツいみたいで、
学校の問題集を解かせていても、同じ問題を2度以上間違えてしまうと
「なんでなの?!何が違うの?!(怒)」
と怒れてしまいます。
そんな時は「お、B君頭から湯気が出始めたね。プスプス言ってるよ~」と
言いながら他の教科に切り替えることにしています。
「頭がプスる」というのを「悪いこと」ではなくて
「限界の合図」としてとらえているので、
ちょっと悩み始めた時は「B君大丈夫?プスってきた?」とお伺いをたてます。
本人に余裕のある時は「やばい、プスってきた(笑)でももう少しやる」という
ような感じで頑張れるのですが、余裕のない時は「もうやめる」と言います。
この、自分で「もう限界だからやめる」という判断ができるようになってからは
自傷行為はほとんどなくなったように思います。
私は専門家ではないので、対応の仕方が合っているのかどうかは分かりませんが、
発達障害と言っても症状は十人十色なので、
その子に合わせた対応ができればそれでいいのではないかな、
と思うようにしています。
B君は小さいころからずっと療育に通っていたので、とても幸せな子だと思います。
お母さんもとても理解があって、常に
「どうしたらこの子が生きやすいか」
「どういう環境がこの子にとって生活しやすいか」
というのを考えていらっしゃいます。
このように身近な人に理解されて支えられているかどうかは本当に大きいと思います。
B君本人は自分が「高機能自閉症」であることはまだ知りません。
ただ、自分には苦手なことがあるのは分かっているようです。
苦手なことに手を差し伸べ、対処の仕方をひとつずつ教えてあげるだけで
ずいぶん生きやすくなると思うのです。
中学の時はほぼ友達ゼロ人だったB君ですが、
今は部活で仲間ができ、彼なりに楽しく過ごしているようです。
お母さんが「Bが友達と話してるとこ、こっそり撮っちゃった!」と
嬉しそうに話していらっしゃったのが印象的です。
残り2年の高校生活もできる限り手を差し伸べ、
お母さんと一緒にB君の将来を考えていきたいと思います。